羽化不全のカブトムシ!その原因と幸せな余生を送ってもらう方法を解説

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待ちに待ったカブトムシの羽化。

立派な成虫を楽しみにしていたのに、羽がクチャクチャの姿で土から出てきたのを見ると、ビックリしますよね。

中には角が曲がっていたり、脚の一部がなかったりするカブトムシもいるかもしれません。

「なぜ、こんなことになったんだろう?」「もう治らないのかな?」「カブトムシに申し訳ない…どうお世話してあげれば良いだろう?」

あなたの頭の中では、このような疑問が飛び交うと思います。

カブトムシの体の異常は、残念ながら時間が経っても治りません…。その姿のまま一生を終えます。

ならば、飼い主として、少しでも良い過ごし方をさせてあげたいですよね。

このページでは、カブトムシの羽化不全の原因と幸せな余生の過ごし方を解説します。

羽化不全とは

「羽化不全」とは、羽化の途中でカブトムシが死んだり、奇形のある体になったりすることをいいます。

羽化不全のカブトムシは、薄羽が飛び出していたり、角が曲がっていたり、脚の一部がなかったりすることが多いです。

羽が開いたまま閉じない状態のカブトムシを「羽パカ」といいます。

重度の羽化不全では、羽がクチャクチャだったり、おしりが欠けているなど臓器にまで奇形が及んでいたりします。

羽化不全が重度の場合、カブトムシの寿命はかなり短いです。

餌を食べられなかったり、排泄物を出す器官がなかったり…そんな状態では、そう長くは生きられません。

ただ、縁あって出会った命。

最期まであたたかく見守ってあげたいですよね。

カブトムシの羽化不全の原因は「蛹室」にある

では、羽化不全はなぜ起こるのでしょうか。その原因をみていきましょう。

カブトムシの羽化不全の原因は、「蛹室(ようしつ)」にあります。

羽化不全は、蛹(さなぎ)の時期を蛹室の中できちんと過ごせなかった場合に起こります

蛹室とは

蛹室とは、カブトムシの幼虫が土の中に作る空洞のことです。

カブトムシの幼虫は、春になると、体から出る分泌液を使って縦長の楕円形の蛹室を作ります。

蛹室は、カブトムシが蛹の時期を過ごす重要な部屋です。

蛹室

様々な理由から、カブトムシが蛹室を作れなかったり、途中で蛹室が崩れてしまったりすると、羽化不全の確率が一気に高まります。

具体的には、次のような場合にカブトムシの蛹室にトラブルが起こりやすいです。

カブトムシの蛹室にトラブルが起こる原因

・土の高さが足りなかった

・幼虫を密に入れ過ぎていた

・土が乾燥または湿りすぎていた

・土を交換しようとして、蛹室を壊してしまった

・ケースに衝撃が加わった

それぞれについて、詳しくみていきます。

土の高さが足りなかった

カブトムシが蛹室を作るのに、土の高さは重要です。土の高さが足りない場合、カブトムシは蛹室をうまく作ることができません。

国産のカブトムシは、縦長の蛹室を作ります。正常な形の蛹室を作るには、ある程度の土の高さが必要です。

土が足りない場合、カブトムシは土の上で蛹になったり、横長の蛹室を作ったりして対処しようとします。

ただ、それでは、完全な姿の成虫に羽化することはできません。最悪、蛹のまま黒くなって死んでしまいます。

カブトムシの幼虫が蛹室を作るには、ケースの土の高さは少なくとも15cmは必要です。

蛹室を作るのに必要な土の高さ

さらに、土の入れ方として、ケースの底から5cmまでの土は固く押し固めるように、残り10cmは柔らかく押し固めるようにして入れておけば、万全です。

カブトムシは、地盤が安定したところを選んで蛹室を作ります。

カブトムシが蛹室をうまく作れるよう、土は高さ15cm以上を目安にたっぷりと入れてあげて下さい^^

幼虫を密に入れ過ぎていた

1つのケースに幼虫を入れ過ぎていた場合も、蛹室にトラブルが起こりやすいです。

カブトムシの幼虫は、お互いが近づき過ぎないよう、小さな音を出して合図を送っています。

幼虫が密になっているケースでは、蛹室を作るスペースがなく、つま弾きになるカブトムシが出てきます

そのようなカブトムシは、土の上で蛹になるしかありません。

また、土の中に蛹室をなんとか作ることができても、他の蛹室との距離を確保できなければ、強度として不十分です。

隣の蛹室との間が狭く、壁が薄い状態では、途中で崩れる可能性が高いです。

例えば、幅30cmのケースなら幼虫2~3匹、多くても5匹に留めることをおすすめします。

1ケースに入れる幼虫の数の目安

カブトムシが無事成虫になれるよう、蛹室を作るための十分なスペースを確保してあげて下さい。

土が乾燥または湿りすぎていた

ケースの土が乾燥し過ぎていても、湿りすぎていても、蛹室作りは難しくなります。

どちらの場合も、土をガッチリ固められず、崩れやすい蛹室となってしまいます

蛹室が崩れても、カブトムシに作り直す余力はありません。

カブトムシが蛹室をつくるのは、体が変化するギリギリの時期です。

蛹室を一旦作り終えれば、カブトムシは次第に蛹へと姿を変えていきます。

そのような状態のカブトムシが蛹室を修復するのは、まず不可能です。

カブトムシの土は、軽く握って固まるくらいの湿り気が目安です。

頑丈な蛹室を作れるよう、土の管理にも気をつけて下さい。

カブトムシを飼う土の湿り気具合の目安

土を交換しようとして、蛹室を壊してしまった

カブトムシが蛹になっているのに気づかず、土を交換しようとして、蛹室を壊してしまうこともあるでしょう。

そのような場合、カブトムシが羽化不全になる可能性は非常に高いです。

ここで、飼育下のカブトムシの幼虫が成虫になる時期と流れをまとめてみました。

カブトムシが幼虫から成虫になる時期と流れ

カブトムシが蛹になるのは、5~7月頃です。早い個体なら、4月から蛹になる準備を始めます。

カブトムシの幼虫は、蛹室を作り終えると、次第に蛹へと姿を変え、3週間ほど過ごします。

羽化後、カブトムシは、蛹室の中で1週間ほどかけて体を乾かし、しっかりと状態を整えてから、土の外へと出てきます。

カブトムシが成虫の姿で現れるのは、7~8月頃です。

このように、カブトムシは、4月以降に順次蛹になり始め、7~8月頃に成虫の姿で土から現れます。

蛹室を壊さないためには、土の交換は3月を最後にするのが安全です。

また、僕としては「露天掘り」はおすすめしません。

露天掘りとは、土をそっと掘っていき、蛹室の天井にあたる部分のみ取り除くことをいいます。カブトムシの様子を観察するために行います。

ただ、カブトムシの飼育に慣れていない人が露天掘りにチャレンジするのは危険です。羽化不全を起こしかねません…。

露天掘り

羽化不全を防ぐには、4月以降、カブトムシが蛹で過ごす時期はとにかくそっとしておくことが大切です。

ケースに衝撃が加わった

ケースを廊下や玄関に置いている場合、うっかり蹴ってしまったり、落としたり、掃除機をぶつけたりすることもあるかもしれません。

衝撃の程度によっては、土の中の蛹室を崩してしまうこともあり得ます。

そうなれば、カブトムシが羽化不全になる可能性は一気に高まります。

ケースの近くを通ったり、掃除をしたりするときは、くれぐれもケースに衝撃を加えないように気をつけて下さい。

小さな子供がいる家庭は、特に要注意です。

カブトムシの羽化不全を防ぐため、蛹が入っているケースには衝撃を加えないように気をつけましょう。

このように、カブトムシの羽化不全は、ケースの中に問題があったり、衝撃が加わったりして、カブトムシの蛹の時期を蛹室でしっかり過ごせなかった場合に起こります。

カブトムシが無事成虫になれるよう、ケースの中の環境や衝撃に注意して育ててあげてください^^

「累代」がカブトムシの羽化不全に影響する説もある

これまでの話とは別に、カブトムシの羽化不全には「累代が影響する」との説もあります。

累代とは、兄弟のカブトムシで交配させて、何代も繁殖していくことをいいます。

ただ、僕が調べた限り、4~5年ほどの飼育なら、累代が原因で羽化不全が増えることはないようです。

大抵の家庭では、その頃には子供が大きくなって、カブトムシの飼育から卒業していることでしょう^^;

注意が必要なのは、カブトムシの飼育を累代で6年以上続ける場合です。

カブトムシを6年以上飼い続けると、羽化不全が起こる可能性が出てきます。

羽化不全を防ぐには、外から新たなカブトムシを迎え入れ、違う血統を混ぜる必要があります。

カブトムシを長く飼うなら、累代にも気をつけて下さいね。

カブトムシの蛹室で問題が起きた場合の対処法

残念ながら、カブトムシが土の上で蛹になったり、蛹室を崩したりしてしまった場合は、すみやかに人工蛹室に移してあげましょう。

人工蛹室とは

人工蛹室とは、その名のとおり、人工的に作った蛹室のことです。

カブトムシをそのままにしておくと、非常に高い確率で羽化不全になります。

蛹室で問題が起きたカブトムシは、人工蛹室に移してあげて下さい

人工蛹室は、ペットボトルや園芸用品のオアシスを使って簡単に作れます。

人工蛹室の詳しい作り方は、次のページで解説しています。自作が不安な人には、市販のものを紹介しています。

ぜひ、参考にしてください^^

羽化不全のカブトムシが幸せな余生を送るには

ここからは、羽化不全のカブトムシに幸せな余生を送ってもらうための方法について話していきます。

羽化不全の奇形は、時間が経っても治りません。ならば、カブトムシには、少しでも良い過ごし方をさせてあげたいですよね。

羽化不全のカブトムシに幸せな余生を送ってもらうには、他の個体と分けて飼うのがポイントです。

というのも、奇形が重度のカブトムシは、やっと生きている状態です。

奇形が軽度でも、他のカブトムシとの喧嘩は圧倒的に不利です。致命傷も負いかねません。

そこで、羽化不全のカブトムシを別のケースに入れて飼えば、のびのびと過ごさせてあげられます。餌だって独占できます。

羽化不全のカブトムシは1匹で飼うのがおすすめ

このほか、羽化不全のカブトムシの余生として、寿命が短いことを思い、自然に帰すことを考える人もいるかもしれません。

ただ、自然に帰すのは止めておきましょう

羽化不全のカブトムシを外に放っても、餌にありつけずに死ぬか、カラスなどの餌食になるのがオチです。

僕には、それがカブトムシにとって良い結末とは思えません…。

羽化不全のカブトムシが自然の中で生きていくのは大変です。

あなたが、責任をもって最期までお世話してあげてください^^

羽や脚、角が邪魔そうでも切ってはダメ

羽が伸びて体の中にしまえなかったり、脚や角が大きく曲がっていたりして、カブトムシが歩きにくそうにしているのを見ると、「切ってあげた方が良い?」と迷う人もいるかもしれません。

結論からいうと、羽や角、脚がいくら邪魔そうでも、切り落とすのは止めた方が良いです。

カブトムシの体の一部を切り落とせば、そこから雑菌が入り、かえってカブトムシの死を早める可能性があります。

羽といえども、太い筋には体液が流れています。

羽化不全でも、カブトムシにとっては大切な自分の体。邪魔そうなパーツがあっても、そのままにしておきましょう。

羽化不全のカブトムシでも交尾はできる!

羽化不全のカブトムシでも、奇形が軽度なら、交尾して子孫を残すことは十分できます。

「羽化不全でも、普通のカブトムシと同じように生を全うさせてあげたい」と思う人は多いです。

そこで気になるのが、遺伝の問題。

羽化不全が遺伝しないか、心配かもしれません。ただ、羽化不全が子供に引き継がれることはありません

上述のとおり、羽化不全は後天的なものです。

羽化不全が軽度なら、交尾をさせてあげるのも幸せな過ごし方の選択肢のひとつです。

カブトムシとして、一通りの経験をさせてあげられると良いですね。

まとめ

このページでは、カブトムシの羽化不全の原因と幸せな余生を送ってもらう方法について解説しました。

カブトムシが羽化不全になるのは、土の中に蛹室を作れなかった場合や途中で崩れた場合です。

カブトムシが完全な姿の成虫になるには、蛹の時期を蛹室の中でしっかり過ごす必要があります。

羽化不全のカブトムシは、個別に飼育するのがベストです。

羽化不全が軽度なら、交尾して子孫を残すこともできますよ。

羽化不全のカブトムシが幸せに過ごせるよう、しっかりサポートしてあげて下さいね^^